【見学レポート】ショーボンド建設株式会社 つくば研修センター
当協会 特別会員のショーボンド建設株式会社の、茨城県つくば市にあるつくば研修センターにて、2023年2月10日にシステム吊り棚足場協会 見学会を開催しました。
当日の研修内容から館内の様子まで、レポートさせていただきます。
つくば研修センターとは
安全を”体験して”学べる施設
3年前に発案され、構想に1年、設計・打合せに1年、施工に1年と、合計3年かけて完成した研修センターです。
補修工学研究所に隣接しており、”安全の肝”である安全帯の大切さが分かる装置や、大きな事故を復元したパネルなどが設置されていました。
施設内の紹介
視界に入る情報が美しく設計された空間
廊下
廊下の壁に各部屋のカラーや、何を行う場所なのかが記されております。
日本語と英語で記入されているので、日本語が読めない外国人の方や、海外実習生の方にも優しいデザインです。
講習室
会議室には大きなスクリーンとモニター2台が設備されており、後方の席からでも講義資料の文字が容易に読めます。
今回は《橋梁の補修・補強事例(コンクリート橋編)》について講義を行っていただきました。
事務所&ロビー
事務所が施設の中央に位置しているのですが、床は芝生と錯覚しそうな明るい緑色で、開放感のあるグリーンエリアになっています。
今は基本的に在中スタッフはおらず、研修を開催する際に担当者の方が来るのだそうです。
ロビーからは外が見えるようになっており、受付後に荷物整理ができる机スペースなどもあります。
安全研修室
”同じ災害を繰り返さない”というコンセプトのもと、安全研修室が作られました。
身を持って体験することに特化し、直感的に安全対策を学ぶことができます。
安全研修室内は3つのエリアで構成されております。
1.過去の災害 再現エリア
橋脚と足場が設置されています。過去にあった災害をマネキンが再現しているので、建設業界初心者でも分かりやすく危険なことを理解できます。
また、新入社員など名称が分からない方向けに、名称パネルが設置してあります。
新人の方に足場点検チェックリストを渡して、擬似チェックをしてもらうなどの研修も行っているそうです。
2.落下試験エリア
私達が受講した研修では、01)フルハーネスを着用しないマネキンの落下試験、02)巻き取り式のフルハーネス着用+親綱を85cmたるませた状態で落下試験、03)フルハーネス着用+親綱をピンと張った状態で落下試験を行いました。
3.体験エリア
ぶら下がり体験は1回につき6人まで可能。
私達が受講した研修では、01)フルハーネスを付けた状態のぶら下がり体験と、02) 1と同じ状態+”足掛け補助具”を付けてぶら下がり体験 以上2つの体験を行いました。
”足掛け補助具”とは付け根部分に食い込むフルハーネスから受ける圧迫によるうっ血防止ができるグッズです。
事前に自分の身長に合わせて紐の長さを調整しておき、ポケットに紐をしまっておきます。
実際に体験した方からは「ただフルハーネスでぶら下がるのとは全然違う。とても楽に感じる」という声が聞かれました。
新人研修の際はフルハーネスの付け方から教えており、「フルハーネスを正しく装着することが大切」だとおっしゃっていました。
スタッフの方がぶら下がりをサポート
足掛け補助具のロープを、自分の身長に合わせて調整中
01) フルハーネスのみでぶら下がり体験
02) 脚掛け補助具ありぶら下がり体験
担当者の方は「もし足場から落下してしまった場合、重要なのは落下距離」だと説明されており、フルハーネスをただ着用することだけではなく、正しい使い方を研修で学ぶ大切さを改めて感じました。
私も墜落制止用器具(フルハーネス)特別教育を受けているのでフルハーネスの重要性を理解した上で足場内に入って取材や撮影を行ってきたのですが、実際に落下するマネキンを見たり、過去の災害事例を目の当たりにすることで、より重要性を理解できたと思います。
また、進行担当者の方はイヤホンマイクを使っており、広い安全研修室でも難なく声を聞き取ることができました。
安全研修室の外にある「安全掲示板」
現場と同じような環境で朝礼ができる
実橋と足場機材展示
屋外に橋脚が2径間設置されており、吊り棚足場が展示されています。
ここでは現場で実際に行う通りに吊り棚足場を組み立て・解体することができます。
今回はVMAXの 01)新送り出し工法TENMAXの組み立てデモ、02)伸縮ころばしの紹介、03)床材押さえ端部金具の紹介を行いました。
実橋の展示
TEN-MAXデモの様子
トイレ
個人的に、トイレが綺麗なのが大変ポイントが高かったです。
現場に取材に行った際は女性用トイレがないことがあるあるなのですが、この研修施設のトイレは大きくて綺麗で清潔感がありました。
こういう小さな改革が、女性の建設業界雇用拡大の一助となると感じました。
女性の働きやすい環境がもっと整うように、自分も尽力したいと思います。
全体を通して
新人研修に特化した最新施設
建設業界について知らない方が研修を受けたら、安全に働くための基礎知識を一通り学ぶ環境が整っている施設だなと感じました。
この施設は”体感して学ぶ”ことに重点を置いているため、自分で危険性を体験して実感することができます。
文字や写真が載っているマニュアルを座学で学ぶことも大切ですが、自分で経験して→自分が心から実感したことは、安全性を理解して行動できる習慣がより身につきやすいと思いました。
建設業界の労働人口や減っているので、今後は海外実習生の誘致・教育環境の充実が各社の重要課題となってきます。
日本語が分からない方も体感して学べるため、このような施設の重要度はこれからますます高まると感じました。
(取材:椿 美里)