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【インタビュー】雪国での積雪を伴う長期の橋梁施行でも、安全を確立する地道な工夫と努力 株式会社源架設【後編】

今回は長期にわたる橋梁の施工で、長年SPIDERパネルをご活用いただいている、株式会社源架設 代表取締役の今井 永富さま(以下、今井社長)からお話を伺いました。

インタビュー前半はこちらから、ご覧いただけます。

【現場情報】

  • 完成年:令和5年4月
  • 吊足場面積(パネル部のみ、中段足場等含まず):10786m2
  • Iqシステム足場面積:3700m2
  • 架設日数(組立):90日(中段足場等含む)
  • 予定架設期間:36か月

SPIDERパネル導入前はどのような問題がありましたか?

ーーSPIDERパネルを購入する前はどのように足場を設置されていたのでしょうか?

今井社長:
SPIDERパネルを購入する前は、在来工法やワイヤーブリッジで足場を設置していました。

しかし、在来工法では落下事故の発生率はやはり高く、他社では死亡災害重大災害も発生していました。

当社ではSPIDERパネルを導入して、吊り足場に関する労災事故は1件も報告されていません。
前回のインタビューでもお伝えしましたが、事故がないことが一番ですから、職員さんの家族のことを考えると、本当に導入して良かったと思います。
他社さんもいろんな形で導入を検討していただき、安全性を高めてほしいですね。

 

ーー日本全国でシステム足場の使用を指定したり、パネル足場を使う流れが進んでいますね。この動きが広がって、誰もが安全な足場を享受できるようになってほしいですね。

雪国での長期にわたる橋梁の施工:SPIDERパネルを使って良かった点

 

ーーSPIDERパネルを導入されてどれくらい経ちましたか?

今井社長:
もう10年以上は経っています。
注文をしたらトレーラー1台ずつくらいで運んできてもらえるので、大変助かっています。

今後は同時に工事を行う期間が長くなり、足場をかけて施工を行うなら、床版取替えの他にも高桁の補強・塗装工事や支承取替工事など、全部くっつけるようになってきたんです。

そうすると、1連の工事が終わるのに、おおよそ3年近くかかります。
だから我々の責務としては、例えば1ヶ月に1回にチェーンの緩みやクランプの断絶がないか・雪の状況などの確認・点検をしています。

 

ーー3年は長いですね。現場の様子をしっかり見に行き、手放しにはしないということですね。

今井社長:
そうですね。とくに北海道は特殊で冬の間は工事を行いません。

11月〜3月いっぱいまでは高速道路上の作業ができないため、その間は休工になります。その間、足場は掛けたままになりますが、現場が動いていなくても様子を見に行きます。

 

ーー現場によって、違うんですね。今後の検証結果でも変わってくることもありそうです。

今井社長:
今後も東北や青森などで冬に長期でかける場合は、このやり方が主流になるのではないでしょうか。

検証も含めて、どれくらいの期間とパネル量になるか相談しながら導入計画を立てる必要があります。資材が入手できるかも含めて、予算を立てるのがなかなか難しいと感じています。

 

ーー物価上昇の流れもあって、資材が手に入りにくい状況はありますね。11〜3月の間に工事ができないのは地域性なのですね。

 

今井社長:
やはり道路が滑るので、橋面状の作業をすると重大事故が発生しやすくなります。

北海道の例をあげると、5月の連休明けから上の床版を取り替える場合、12月〜4月までの4ヵ月間で下から足場をかけさせてもらいます。300〜500mは、両方の岸から横に足場を組んでいきます。

 

4月から片側相互通行していただいて工事を開始するとしても、300m以上の距離をシステム足場で組みシートを張るのは、100人ぐらい職人さんに入ってもらって足場を組んでも、すぐに工事を開始できるほどの状態にはできません。

そのため、12月頃から3月いっぱいにかけて、事前に足場を組ませてくださいとお願いをします。

 

ーーなるほど、冬の間に足場を組んでおき、春になったら朝顔を開いて工事に移れるようにするんですね。

今井社長:
そうです。組んでいる最中は雪がたまらないように朝顔は閉じておきます。
今のシステム足場も単管と単クランプを使って、朝顔が開閉できるように北海道の方はやっていますね。

冬を通してシステム足場を組む業者は少ないので、これからも材料を持つ必要があると感じています。

ですので、カナモトさんから一部機材を借りて1橋をかけたり、タカミヤさんから買ってそのまま現場にいれてもらうなど、いろいろな使い方をしないと難しいですね。

 

ーーカナモトさんとは以前から、親しいつながりがあったのでしょうか?

今井社長:
北海道でSPIDERパネルを使っているのは金本さんがメインで、他はあまり保有していないんです。

他のパネル足場製品の方は何社か保有していますが、同じものを持っている企業さんにお借りするのがベターではないでしょうか。

北海道ならではの組み方の工夫、地域性を考慮した検証が課題に

ーー北海道ならではの地域性で、長期の施工になる場合は越冬もされると思います。みなさんが気をつけていることはありますか?

今井社長:
今回かけている現場の下は私道で交通量が多く、高さが20m以上あります。

越冬を前にして元請けさんと考えているのは、ツララが発生しないか、雪が付いて落下しないかを検証しようと話をしています。

 

ーー越冬の前に今から対策と検証準備をしているのですね。

今井社長:
いまは空き口に水が落ちないようシートを1枚貼っています。
ですが、防水シートを張り巡らせていても雪が側面のパネルについていた場合、1時間ほど通行止めにして夜間に雪を落とさせてもらうなども検討しないといけませんね。

それでも駄目なら秋に部分的に解体して、春にもう一回組むなど戸田建設さんと相談中です。

 

ーー自然現象は実際に迎えて見ないとわからない部分も多く大変そうです。

今井社長:
いま図面はタカミヤさんの設計会社さんに描いてもらっていますが、やはり北海道はとても積雪が多いです。

荷重計算を出してもらった際に、屋根の上などにパネルを掛けてさらに積雪が30、50cmあると言われると、やっぱり雪落としをしてもらわなくてはいけません。
とくに北海道は図面の他にも、転倒防止の手すりを付けるなど、いろいろなことを考えなければ駄目だと感じます。

 

ーー積雪などを考慮して、通常の荷重計算だけでは足りない部分をフォローする必要があると。

今井社長:
崩落したら困るので、みんなが知識を持って考えることが大事ですよね。

内地の強度計算書に「積雪」という言葉はめったに出てこないじゃないですか。
設計会社さんも通常の図面よりも苦労されていると思います。作業員が二人乗って、積雪が30cmあるとアウトですとか。

でも出してもらわないと監督書を取れなくなってしまうので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。

 

ーー同じ日本でも、地域が変われば気をつけることも変わりますね。とても勉強になります。

一度の組み立てていろいろな施工ができるよう、組み立てる工夫

北海道が一体型で工事を発注するようになった流れで、塗装用の現場では600mm・800mm下げて足場を組むのですが、歩廊や支承の取り替え・補強をする人のために、1段下がるような形になっています。

 

ーー1つの足場ですべての作業が完了できるように、計算してあるんですね。

今井社長:
はい、そうです。
ですが、最初の図面作成の前に、元請けさんにどういう仕事をするのかをすべて確認しなければいけません。

事前にそこまでやってこそな部分もあり、今まで足場を組んできてこんなことも分からないのかと思われてしまうと、会社の体裁にも関わります。
最初から提案をすれば、元請さんにも理解していただけて「ここまで考えてくれるなら、次も源架設さんを使おう」と思ってもらえたら嬉しいです。

 

 

ーー1度組んだものをやり直すと手間も費用もかかりますから、最初から設計しておくと双方の仕事がスムーズに進みますね。こうした細かい配慮や提案が、源さんの付加価値に繋がっているんですね。

今井社長:
システム足場やいろんな工事に関わったら我々も勉強して、どういう工事をするのか把握する必要がありますよね。

 

ーーこちらの上にまで伸びているものは何でしょうか?

図面イメージ

今井社長:
飛散防止ですね。高速道路の走行車線はみなさん100kmぐらいで走っています。
気をつけてはいますが、例えば橋面上の作業中にビニール袋やコンクリートの粉などが飛ぶのを防止するために提案したものです。

これは最初から指定されていたものではありませんが、自分たちがやってきた経験の中で、図面に書き加えましょうと提案しました。

役所さん向けにも、経験から必要と感じたものは指定がなくても提案します。
一目見てこれがあれば安心だなと、分かってもらえると思います。

 

ーー人の目に付く場所だからこそ、気をつけることが多いんですね。

今井社長:
高速道路の床版取り替えは、北海道では数が少ないです。
そのため、作業環境などをコンサルタントさんやJHさんが気にかけられています。

源さんが掛けているなら安心だと言ってもらうには、コンサルタントさんが描いた図面に私たちの経験を活かして、手を加えることが大事だと考えています。

 

ーーこれまでの経験生かして、良い現場づくりへつなげていくのですね。

今井社長:
初めて鳶の建設工業さんと床版取り替えをやる時に、いろいろ失敗をした経験もあります。
当時は高速道路の走行車線を潰してもらい、工事を受注せずにその作業で4、50人くらいを投入して、100mを10日で終わらせたりもしました。

失敗も成功もあって、床版工事は源さんにと依頼が来るようになりました。
紆余曲折を経て少しずつ完成形に近づいていると感じます。

今後の協会の布教活動に期待、すべての現場の安全性を高めてほしい

今井永富さま

ーー今度、SPIDERパネルに限らず、協会に期待することはありますか?

今井社長:
タカミヤさんのSPIDERパネルを導入して、うちの会社は売り上げが1.5〜2倍に伸びました。さらに、高速道路などの依頼も多くなりました。
システムに合わせて、ある程度業者さんを変えていく時期に来ていると感じます。

パネルが気楽…という言い方はよくないかもしれませんが、例えばとび職の会社でもある程度購入して、揃えられる良い方法があればいいのにと感じます。

 

ーー組み作業は何回かやらなければ身につきませんし、毎回異なるものを借りるのも大変ですよね。どうしても費用面で使えない業者さんもいると。

今井社長:
いま我々も下請けさんを育成している途中ですが、立ち上げたばかりの会社では借りられないと言う声も多いです。
うちから使ってもらうことも行っていますが、今後のためにももう少し間口が広がればよいなと思います。

このままでは、システム足場を導入できるところが限られた現場だけになってしまう。

 

ーーたしかにこのままでは、業界全体の安全性の向上にはつながっていきませんね。人命を守るからこそ高価になると、新規参入が難しくなる…。

今井社長:
建設業界で一番多いのは、墜落や転落災害です。
とても良いシステムなので、他の業者さんも安く使えるような方法が見つかるといいですよね。

 

もちろん簡単ではないと思いますが「もしSPIDERパネルがなかったら、この足場は掛けられなかっただろう」と思う現場もたくさんありました。
業界内にうまく広がって欲しいですね。

 

ーー前回に引き続き、現場の環境がより安全になるよう業界全体をよくしたいという想いが伝わりました。本日はありがとうございました。

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