【インタビュー】現場効率化の鍵は事前準備。スマートな施工で安全性と効率化を両立する 株式会社イワサキテック【後半】
今回は、システム吊り棚足場協会会員の、株式会社イワサキテック代表取締役 岩﨑潤太郎さま、(以下、岩﨑社長)にお話を伺いました。
前半のインタビューは「協会が人を繋げる場になってほしい。交流で広がる人脈づくりの大切さ」
VMAXを導入した経緯・抱えていた課題
——前回に引き続き、次はVMAXを導入された経緯を伺いたいと思います。導入の背景にはどのような経緯がありましたか?
岩﨑社長:
当初、施工性と購入金額の相対バランスから、他社製品かVMAXを使うかで迷っていました。
検討を重ねた結果VMAXの購入を決めましたが、事前にVMAX専用材の開発を相談し、ご対応頂けたこともありVMAXに決めました。
——なるほど、購入前に専用材のご相談を行われたのですね。ご自身でもいろいろ検証されていたと伺っています。
岩﨑社長:
そうですね。自分でも試した部分もありますが、サンプルも製作頂いてこれなら大丈夫だろうと。
他の部材との関係性も気にしますし、触ってみないと分からないことも多いですから。以前使っていた他社材よりも、施工時間を短くできたと感じます。
スマートな施工を行うために事前準備を徹底。材料の理解と工夫で現場の作業時間を短縮する
岩﨑社長:
現場の施工時間をどれだけ短縮できるかは、非常に重要ですね。
うちの場合はヤードで図面に合わせてチェーンの長さを事前に調整しておきます。
キャッチチェーンにVMAX専用の吊り金具を付けて高さを決め、完成させた状態でチェーンが外れないようテープで巻いておく。それを土嚢袋にいれて現場に搬入します。
あとは現場で、職人がおやごところばしをつけたら床の完成です。
事前準備を現場以外の場所で済ませられるので、施工スピードが格段に上がりましたね。
——すごい、事前に作ってしまうのですね。次の現場へも動きやすくなりますし、効率がとても上がりますね。
岩﨑社長:
うちは床面を組むとき、1人100平米以上組みますから施工の早さは意識しています。
10人いれば1000平米は余裕を持って組めるのではないでしょうか。
——事前準備があるから、これだけのスピードが出せるということなんですね。
岩﨑社長:
そうですね。
長さが規定で決まっているから、フラットに作れることも利点だと思います。
その代わり、VMAXは桁のジョイントに当たることもあるため、その際にどの長さの専用材を用意するかは重要ですね。
送り出していくときにジョイントが邪魔になることがあるから、ころばしの寸法バリエーションがある程度ほしくて、200mmのころばしを作りました。
——200mmのころばしは、ほかにどういったシチュエーションで使うのでしょうか。
岩﨑社長:
橋脚の隙間を埋めたいときですね。
200mmのころばしで埋めて組んでおけば、橋脚周りの作業をする際におやごを1本抜いてしまえば、すぐに開口部を作ることができます。
——なるほど、調節がしやすくなるんですね。
岩﨑社長:
例えば、メタルの橋梁工事では橋脚も扱うので、橋脚周りに足場を組んでおく必要があります。
その際、どうしてもブラスト施工時に有害物質が発生するので、有害物質対策としても完璧に隙間を埋めなくてはいけません。
200mm、400mm、600mmも材料があれば、汎用性があり使い勝手が良いですね。
——本当にほぼ全ての材料を使いこなしているのですね。
岩﨑社長:
それに合わせて、伸縮のころばしをどこで使うかを考えたりはします。
伸縮を使わず親を吊ってコンパネを伏せれば、斜めの部分は多少であれば問題はないかなと。
現場の皆さんが喜ぶ、システムの足場以外の開発も進めてほしい
——ご自身でチェーンを作る、ころばしを入れるサイズを作るというのは、VMAXを導入されてすぐ進めたのですか?
岩﨑社長:
そうですね、すぐ取り組みました。
最初に作ったのは800mm〜600mmで、そこから200mm刻みで作りました。
システムの機能・材料は知っておかないと意味が無く、実用性がありませんから。
小さいサイズのころばしを作ることで、単管足場からシステム足場に切り替える以上の施工性を実現できたと思います。
——実用性があってこそ、システムと呼べるということですね。
岩﨑社長:
システムをより工夫する点として、岩手の現場で自社で荷揚げ機をつくる試みをしました。引き込みタイプのものです。
ぜひ協会でこうした製品の開発にもシフトしてくれると、現場は喜ばれるのではないでしょうか。
——なるほど、荷揚げ機。足場だけではなく、現場に必要な製品の開発にも需要がありそうです。
岩﨑社長:
システム吊り棚足場だけではなく、実際に機材を荷揚げするのに困っているお客様もいるので、そうした製品も開発ラインナップにいれてもよいのではと思います。
安全な現場で多くの人が働けると良いですよね。
施工時間の短縮と安全性は直結する、教育とマニュアルの重要さ
——効率化の側面もあると思いますが、橋梁で行う作業時間が減れば減るほど、従業員の皆さんの安全にもつながる。とても大事な観点だと、本日のお話しを通して感じました。
岩﨑社長:
現場では作業を迅速に、スマートに施行を終えることは非常に大事ですね。
危険な作業と思わせないぐらいのスマートさを実現するには、100%の準備をして人を充分に教育する。その上で、作業の手順化・マニュアル化も重要になります。
そこまでやって、やっと危険な作業リスクを減らせると思っています。
——たしかに、準備だけではなく教育も大切ですね。マニュアル化をすることにおいて意識されていることはありますか?
岩﨑社長:
そもそも「乗り出してチェーンをかける」などの手順があると、落下の危険性があります。そうした手順を準備段階で解消し、より少ない手順でマニュアル化していきます。
複数の手順があると、人によって行動がばらけてしまい重大なミスにも繋がるリスクがある。
単調な作業の繰り返しであれば間違えませんから、極力作れる現場は事前に作れるものを揃えていきます。
手順を減らすことは、「危険なリスクを減らす」ことに直結します。
——全国にヤードがあるということも、そうした準備を実現できる大きなポイントだと感じます。
岩﨑社長:
大型車両で搬入してもうちのヤードなら、すぐ掃き出す必要がないため、充分ゆとりを持って降ろす時間があると思います。
荷揚げも手伝います。
100%の準備をすれば現場の方がとにかく楽になる。
そうした、スマートさを求めてやっていますね。
——それを実現できているのも、社長の行動力や現場のスピード感などがあってこそと感じますし、大きな強みの一つなのですね。
岩﨑社長:
他の会社と同じことをしても仕方がないですから。
迅速かつスマートに施工し続けることで、社員とも関係会社の皆さんとも信頼関係を構築していきたいと思っています。
——着眼点がとても素晴らしいですね。そうした岩﨑社長の審美眼が、事業拡大をし続けられる理由なのだと感じました。
DX推進など業界全体の課題は、業界問わず人脈をつなげ協力して乗り越えたい
——本日はいろいろな話を伺って、私もとても勉強になりました。在庫管理のシステムやDX推進など、岩﨑社長が今後に向けて感じている課題などはありますか?
岩﨑社長:
DX推進は今後重要になるでしょうね。
ツールや仕様の精査も大変ですし、協会から会員向けに便利なツールが使える仕組みがあると嬉しいです。
働き手が減っていく中で、自社も含めてどの会社も考えなくてはいけない課題だと考えています。
——まだ自社開発で手一杯のみなさまも多いでしょうから、そうした時代の流れにも対応できるよう、協会としてもできることを進めて行きたいですね
岩﨑社長:
どこか1社というより、「業界全体を大きく巻き込むこと」が大事だと思いますね。
まだここに注力しているメーカーさんはいない。協会が先駆けとなってポジションを獲得してしまうのが、後から追うよりも楽だと思います。
——これといえばこの会社、というイメージも大事になりますよね。使ってもらって、フィードバックから改善していくような共創の可能性も感じます。
岩﨑社長:
いまはそうした、IT開発も進んでいる世の中だと思います。
私達もまだ人脈や付き合いがない分野ですので、うまく良いものが生まれてほしいですね。
——お互いの強みやできることを提供し合えば、業界全体を巻き込んでより良い現場環境の構築につなげていけそうです。本日はありがとうございました!