【インタビュー】現場検証で安全性と効率化の追求。『VMAX+Iq System』導入成果と将来の可能性

今回は、システム吊り棚足場協会 正会員の、佐々栄建工株式会社 代表取締役 佐々木 拓也様、(以下、佐々木社長)、株式会社藤原組の藤原 士様(以下、藤原社長)、石川 政幸様(以下、石川土木部長)に、橋梁補修工事でのVMAX+Iq System活用と現場パトロールについてインタビューを行いました。
【現場情報】
- 現場の特徴 :地覆補修、桁、高欄の塗装工事。通行止めによる工事
- 工事内容 :橋梁補修工事
- 元請業者 :株式会社藤原組
- 使用機材 :VMAX、朝顔にIq System
- 吊り足場面積:床165㎡ 朝顔359㎡ 屋根210㎡
- 足場組立日数(朝顔含む):9日
- 予定架設期間:90日
左から、佐々栄建工 佐々木社長、藤原組 藤原社長、石川土木部長
VMAXを採用した経緯:システム足場の活用で感じた魅力と可能性
ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、今回の現場でVMAXを採用した経緯についてお伺いできればと思います。
佐々木社長:
藤原組さんでVMAXを使っていただくのは今回が3橋目です。
以前システム吊り棚協会の現場レポートコンテストで優秀賞をいただいた現場が、藤原組さんとVMAXを使った初めての現場でした。
ーーそうなんですね、ありがとうございます。 実際にシステム吊り棚足場で組んでみた現場はいかがでしたか?従来足場との比較でも大丈夫です。
佐々木社長:
システム吊り足場と在来工法ではまったく違うよね。
藤原社長:
違いますね。
自分が足場内に入って施工をしているわけじゃなく、大槌町が発注者として行っている安全パトロールの参加者からの評価が良かったですね。1ヶ月に1回ほどパトロールを行い、大槌町の方に足場を歩いて見てもらったんですが、従来の足場より歩きやすく良い反応でした。
佐々木社長:
やっぱり歩きやすいですよね。
藤原社長:
システム吊り足場を使ったのはVMAXが初めてなんです。
単管の在来工法で組んだ足場だと、やはり繋ぎ目の段差や隙間が気になったりするじゃないですか。 そういうことが無くて、とても安全な作業床でしたね。
ーーなるほど、美観に優れているのはVMAXの特長の1つですので、そう言っていただけると嬉しいです。その地域に暮らす人達からみても、やっぱり綺麗な景観の方が安心感がありますよね。
石川土木部長:
まず綺麗だし、 足場を組む施工の様子を見てもやはり安心できました。
佐々木社長:
実際、施工スピードはかなり早かったです。在来工法に比べて半分の工期で済んだのではないでしょうか。
朝顔に従来のコンパネを使うと時間がかかるので、今回はフラットパネルを使用してみました。
コンパネは消耗品になってしまい、最終的には産業廃棄物になってしまう。しかも、シートを被せていても、雨風に濡れるとこれも駄目になります。他製品というプラスチックタイプも考えましたが、結局劣化してしまう。
その点フラットパネルなら色が汚くなっても塗り替えればよく、通年で何回も使えることを考えると現場にとっても当社にとっても、ゴミ出しの手間も増えないフラットパネルが良いなと思いましたね。
ーー現場でゴミを出さない資材選びをするというのは、たしかに重要ですね。
協会活動の意見から生まれたVMAX+Iq Systemを今回現場に初導入!
ーー今回、VMAX+Iq Systemの現場検証を行いましたが、それについてはいかがでしょうか。実際に組んでみて、これから使う側としてのご意見を伺いたいです。
佐々木社長:
当初はおやごを2〜4メーターで高欄からちょっと広げ、作業床を取りたかったのですが、チェーンのピッチがあったり、必要以上に作業床を広げてしまうと材料費がかかることが明確でした。
恐らく橋が大きくなるほど、Iqシステムの使いやすさが出てくると思います。やはり施工スピードは断然速くなると思います。
ーーなるほど、現場の規模が大きくなればなるほど、Iq システムの特性を活かせそうだと。
佐々木社長:
そうですね。これからまだ使ってみて気がつくことはあると思いますが、検証結果は大変よかったと思います。
ーー「VMAX+Iq System」を使ってみた感想や、もっとこうだったら良いと感じることはありましたか?
佐々木社長:
このIq システムを吊り足場の現場で使えるようになったのがまず良いことですね。
機材を増やしていく予定ですが、「VMAX+Iq System」を導入する検討をしています。
Iq システムを自社材で保有しておけば、より安全な足場を効率的に組めるようになるなとも考えていました。
ーーそうなると、元請と施工業者と足場業者にとってお互いにWin-Winになりますね。今後も使ってみて気になる点がありましたら、教えていただけると嬉しいです。
現場パトロールの取り組みと意見交換は後進育成や職人の成長にもつながる
ーー今回は、協会として現場パトロールを実施してみました。それについても皆さんからご意見を伺えればと思います。
佐々木社長:
前回は青森で現場パトロールをやりましたが、東北支部のタケナカの成田さん、秋野組の秋野さん、タカミヤの松田さんだけで寂しかったので、今回はこんなに集まってもらえると思っていませんでした。
普段から関わりのある私だけではなく、さまざまな経営者の目線からどこが駄目だと言われた方が、次の職人たちの成長のためにもなると思います。
ーー今後はお互いの現場にもっと足を運べるような方針にしていけば、「現場パトロール時に気付いたことはどんどん指摘するべき」と気づいていただけるかもしれません。お互いに必要なことを言い合える会にしていければいいなと思います。
藤原社長:
私は実際、こういう協会があることやパトロールなどの取り組みを行っていること自体を最近まで知りませんでした。
初めての経験でしたが、システム吊り棚足場協会は大変信用ができるなと感じましたね。
ーー当協会は、VMAXやネオベスパ/スパイダーパネルなどの吊り棚足場材を取り扱う会社が集まった協会で、北海道から沖縄まで、実は全国51社(2024年12月時点)から加入頂いておりますが、なかなか活動内容をお伝えする機会も少ないですからね。
当協会の取り組みについて
ーー本日は現場見学会兼、現場パトロールも一緒に行った形です。現場検証と「VMAX+Iq System」という開発製品の現場検証を行ってみて気づいたことや、活用のアイデアなどの意見交換を目的とした会でした。
佐々木社長:
そうですね、メインは新しい部材の意見交換会です。今回はそれをやらせてもらうとの、意見交換がみんな初めてだったんです。
ただそれだけで終わらせるのは勿体ないので、現場パトロールも行いましょうと。それを元に改善に向けて動く計画です。
藤原社長:
最近、橋梁補修工事を受注し始めて吊り足場を組むようになったので、初めて知ることが多いです。こうした活動や機会があるのは素晴らしいと思います。
ーーありがとうございます!現場パトロールなど、本協会の取り組みについてのご意見などがあれば伺いたいです。
藤原社長:
よい取り組みだと思いますよ。
石川土木部長:
普段から現場を見ている現場担当としては毎度のことですが、これは危ないんじゃないか、これはどうなのかと逐一作業員さんに聞くと、嫌がられることもあります。
ですが、今日のパトロールでは気になる部分にポツポツと反応している人もいました。やはり、目に付く部分は会員さんで共通しているのだと少し安心できましたね。
ーー確かに外部の方からご意見をもらうのは、現場にとっても良い刺激になりそうです。
若手・人材不足への危機感からもシステム足場へのシフトチェンジが重要
ーーこうした現場の設計段階から国交省が吊り棚足場のシステムの推奨製品としてVMAXやネオベスパ/スパイダーパネルを提示をしてくれてはいますが、すぐに全国すべての現場で、在来工法からシステム吊り棚足場工法に移行するのは難しいですよね。
これからの業界のあり方、安全かつコストの良いものにすることも課題に感じています。
佐々木社長:
やはり、安さを優先して、安全や見た目へのこだわりは二の次だという方もまだまだ多いです。
実際はシステム足場に切り替えることで施工スピードも早くできますが、設計の基礎にも影響しますから、移行に準備や決心がいる会社もあるでしょうね。
藤原社長:
うちは初めから吊り足場はシステム吊り棚足場を使用しているので「こういうものだ」と思っていました。そこはスムーズだったと思います。
補足すると、橋梁の現場では単管足場工法を経験していないんです。わたしたちの橋梁の親分の会社は「安心をお金で買え」と、最初から言っていたので今こういう形になっているんです。
ただそこで壁になるのは、設計の歩掛がどうにかならないかと、ずっと2人で話していますね。
国がシステム吊り棚足場を推奨していても、全国に浸透するのはあと10年ぐらいはかかるのではないでしょうか。本当に、地方への指示は遅いですから。
ーーそうですよね。全国の自治体でシステム吊り足場を導入できるようになるまで、時間がかかったとしても、職人さんの命のためにも進めるべきですよね。
佐々木社長:
10年後なんて、もっと職人がいなくなって若手が入ってこなくて人手不足になるのは分かっていますからね。
そんな時に在来工法では絶対やっていけませんから、システム吊り棚足場に頼るしかないと感じます。
ーー在来工法だと、組み立てるマニュアルなどはなく、職人さん個人の能力によって組みあがった足場の完成形が異なることも懸念点といえますね。
佐々木社長:
うちが乗り換えたのも実習生や女性作業員がいたので、その子たちがスムーズに働けるようにするならVMAXだと思ったからです。
他社製品も広く触ってみましたが、その中でもVMAXが一番良かった。
今までは材料も置き場も持たないスタイルでしたが、これを買うことによって合わせた材料を買うようにしていきました。
ーー多様性といいますか、これから建設業界全体で本当に人が減っていく中で、必要になる改修の一つといえそうです。
佐々木社長:
いろんなシステムがある中で、値段でも勝負がかけやすいのはVMAXなんです。
この先5〜10年は、必ずVMAXを前提とした現場環境で仕事が進んでいくと思ってやっています。在来工法ができる職人が少なくなるなら、VMAXしかないとシフトチェンジしていくような流れになると思います。
競合するような、対抗馬な製品は結構あるのですか?
ーーネオベスパ/スパイダーパネルはやや後発かもしれませんが、VMAXは他より早かった印象です。これから、どんどん改良を重ねたいと思っています。
佐々木社長:
ここの橋でも使っている「伸縮ころばし」があるのもVMAXだけですよね。
石川土木部長:
ずっと「これが欲しい」と思っていたんです。そうしたら、あるじゃないか!(喜び)と。おかげで、最後の調整が楽になりましたね。
佐々木社長:
うちの現場にはいらないかなと当初は買わなかったのですが、今回ついに購入したんです。
こうしたシステム足場で解決できることが増えると、業界としては安全性も作業効率もあげていける。
どんどん導入しやすい環境をつくっていけると良いなと思います。
ーーなるほど。こうしたかゆいところに手が届く製品が作れることも協会の利点だと思いますので、引き続き、開発とも協力して良い現場環境を提供できるよう尽力したいと思います。
本日は、みなさまありがとうございました。