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【インタビュー】「橋を守るために必要なのは技術だけではない」橋塗協 鈴木副会長と佐々木理事が語る「橋梁維持管理の未来」と「人とのつながり」 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会

2026年9月10日、一般社団法人 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会、通称「橋塗協」が主催する、
北海道・東北・北陸(第10回)三地区合同研修会「道路橋の補修・予防保全」技術講習会が、仙台市で開催されました。
講習会では、国土交通省東北地方整備局、地方自治体、技術センター、専門団体など、橋梁維持管理に携わる関係者が登壇し、「インフラの保全を考える」をテーマに、橋梁の長寿命化や維持管理の課題について講演が行われました。
システム吊り棚足場協会も本講習会へ参加し、当協会顧問の池田輝次氏が「橋梁維持補修時代における吊り棚足場の重要性」をテーマに講演を行いました。

今回は、同協会副会長の鈴木様(以下、鈴木副会長)と、同講習会で「有害物含有塗装橋梁の対応」をテーマに講演された、協会理事であり、元国土交通省東北地方整備局道路保全企画官でもある 佐々木様(佐々木理事)にインタビューを実施いたしました。

橋梁の維持管理を取り巻く環境は、この十数年で大きく変化しています。
高度経済成長期の「造る時代」から、既存インフラを長寿命化させる「守る時代」へと移行する中で、予算不足、人材不足、技術継承など新たな課題も顕在化しています。
橋梁維持管理の現状や課題、塗装業界から見た足場への期待、そして今後の専門団体同士の連携についてお話を伺いました。

 

【団体概要】

  • 団体名 :日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会
  • 設立  :昭和41年(1966年)09月07日
  • 事業内容:橋梁・鋼構造物における重防食塗装技術の向上および普及推進、技術者・技能者の育成、安全施工の推進、技術開発ならびに技術情報の発信
  • 主な業務:調査、計画、設計、維持管理、マネジメント
  • 特徴  :国内唯一の橋梁・鋼構造物に関する重防食塗装専門工事業団体として、橋梁の長寿命化と塗装品質の確保に取り組む技術者集団
  • 注力分野:橋梁維持管理、重防食塗装技術、塗替塗装工事、安全施工、技術継承・人材育成、インフラ長寿命化インフラ長寿命化
  • 所在地 :東京都中央区日本橋茅場町2丁目4番5号 茅場町2丁目ビル3階
  • 公式サイト:https://www.jasp.or.jp/

★橋塗協は1966年に「鋼橋塗装専門会」として発足し、1972年に社団法人日本鋼橋塗装専門会を設立、2000年に現在の名称へ変更しました。2012年には一般社団法人へ法人化しています。

左から鈴木副会長(橋塗協)、池田顧問(SSA)、佐々木理事(橋塗協)

「造る時代」から「守る時代」へ。それでも変えてはいけないもの

ーー本日はよろしくお願いいたします。研修会の講演は大変勉強になりました。
橋梁業界は、高度経済成長期の「造る時代」から、既存インフラを長持ちさせる「守る時代」へ移りましたが、昔と今では、課題も大きく変わっているのでしょうか。

佐々木理事:
確かに、新しいものを造ることが中心だった時代から、今あるインフラを長持ちさせる時代へと、スタンスは変わりました。
ただ、私が大事だと思うのは、時代や仕事の形が変わることではありません。
時代はその時々で変革していきます。でも、仕事に対する思いは変わってはいけないんです。
一生懸命さや真面目さ、真剣さと言えばいいのでしょうか。残念ながら、そうした部分が以前より少し薄れているように、個人的には感じています。
熱い思いを持って仕事に取り組まなければいけません。
仕事量や受注機会の変化、若い方が仕事に就きにくいといった、さまざまな背景もあると思います。ただ、環境や仕事の形が変わったことだけが問題なのではありません。
仕事に向き合う思いや熱意を、どう引き継いでいくかが大切です。

橋梁維持管理の最大の課題は、補修・補強予算の不足

ーー現在の橋梁維持管理を俯瞰すると、特に大きな課題は何だとお考えでしょうか。

佐々木理事:
今は新しいものを造ることから、既存のインフラを保存し、長持ちさせる方向へ大きく舵が切られています。
一方で、定期的な点検によって、悪いところが次々に見つかります。
ところが、補修や補強に使える予算が足りません。まず大きな課題は、予算不足です。
どの施設に、どのように予算を配分するのか、発注者側も非常に困っています。思うように予算がつかず、必要な補修を次へ進められないという現実があります。
限られた予算をどう上手く回し、維持管理につなげていくか。発注者側と施工側の双方が考えなければなりません。
ただし、予算がないからといって、安さだけで選ぶのは間違いです。
安全を犠牲にしてはいけません。
安全は無限大です。数字では表せません。お金でも買えません。その前提を守りながら、どう効率良く進めていくかが重要です。

技術が発展しても、現場は人と人

鈴木副会長:
技術や知識は、見本や手本をそのまま受け取れば終わりというものではありません。
関係をつくり、つながりを保ちながら、物事を前へ進めていく。そうなると、最後は「人と人とのつながり」になります。
人は十人十色です。同じ言葉で話しても、考え方や受け止め方が違えば、別の方向へ伝わってしまうことがあります。
そこが難しいところですが、その違いを乗り越えていかなければなりません。
現場は「人と人」です。
これはいつの時代も、これからどれだけ技術が発展しても、変わらないと思います。

仕事を通じて得られる「達成感」を次の世代へ

佐々木理事:
もう一つ大切なのは、「達成感」だと思います。
仕事を通じて達成感を味わわなければいけません。
以前は仕事が多く、忙しい中でも、工事が終わった後に感動や達成感を持つことができました。
何を達成したと感じるかは、人によって違います。工事全体を終えることかもしれませんし、自分が担当した工程をやり切ることかもしれません。
それぞれの達成感でいいんです。
ただ、今は達成感を味わう機会や、その大きさが以前より少なくなっているように感じます。
人とのつながりや、仕事を終えた時の感動、達成感。そうしたものも含めて、次の世代へ伝えていく必要があると思います。

足場に求められるのは「安全」と「省力化」

ーー橋梁塗装を支える作業環境という観点から、足場や仮設メーカーにはどのような役割が求められるでしょうか。

佐々木理事:
まず安全です。そして省力化です。
足場の設置を担当してきた経験者も、高齢化が進み、少なくなっています。そうした中で、ユニット化やシステム化には十分な効果があります。
省力化やロボット化は、どの業界でも進められています。ただし、建設現場はそれほど簡単にロボット化できません。
一つひとつの現場が違うからです。
橋梁も、同じ形のものばかりではありません。直線だけでなく、鋭角や鈍角、曲線もあり、構造条件がそれぞれ異なります。
AIなどの技術が進歩しても、最後は現場です。
だからこそ、システム吊り棚足場の出番があると思います。
安全性と省力化を両立しながら、それぞれ異なる現場条件に、どれだけ短時間で対応できるのか。その点をきちんとアピールすることが重要です。
標準的な条件だけを見ていては駄目です。
複雑な形状や特殊な条件にどう対応できるかを示すことができれば、発注者の注目も変わってくると思います。

「良い製品」ではなく、現場が必要とするものを作る

ーーシステム吊り棚足場協会や仮設メーカーに対して、今後期待されることをお聞かせください。

佐々木理事:
まずは実績を作ることです。
実際に現場で使った時に、何があった方がいいのか、どこを変えた方がいいのか。そうした意見は、実際に使った人でなければ出てきません。
「良いものです」と宣伝するだけでは、実際に使った方の意見にはかないません。
まず一件でも実績を作り、そこから現場の声を集めていくことが大切です。
そして、足場は必ずしも橋梁だけに活用するものではないと思います。
特殊な構造物など、さまざまな場所で活用できる可能性があります。どのような場所や構造に対応できるのかも、今後の一つのキーワードになるでしょう。
メーカーは、自分たちが作った製品を「どこに当てはめられるか」と考えてしまいがちです。でも、それでは順番が逆です。
自分たちが作りたいものを先に作るのではなく、ニーズに合わせたものを作ることが大切です。
私が役所にいた時も、「こういうものを作りました。どこかで使えませんか」ではなく、
「現場にはこういうニーズがあるため、こういうものを作りました」と持ってきてほしいと話していました。
出来上がった製品を既存のパズルにはめるのではありません。
現場や発注者が求めるパズルそのものを、自分たちで作って持っていく。そのような考え方が必要です。
そのためにも、現場を見て、実績を作り、実際に使った方々の意見を聞くことが欠かせません。

 

ーー貴重なご意見ありがとうございます。当協会でも、会員様主導で支部会や勉強会を開催し、現場の声や製品開発のアイデアをいただきながら活動しています。
やはり、現場の声を集めていくことは欠かせませんね。

佐々木理事:
とても良い取り組みだと思います。
限られた人だけで議論するのではなく、さまざまな立場の方が集まって意見交換を行うことは、とても大切です。
現場で実際に使う人、管理する人、発注する人、それぞれ見えている景色が違いますから、そうした声を集めながら進めていくことが必要だと思います。

「発注者との関係づくりは、現場から始まる」

ーー本日は研修会お疲れ様でした。講演者の皆様の中には、発注者側の方々もいらっしゃいましたが、
協会として活動する中で、発注者の方々から直接お話を伺う機会がまだ多くありません。協会として発注者との関係を築くためには、どのようなことが大切でしょうか。

佐々木理事:
役所や発注者に対して、個人や一企業、一メーカーとして行くとなると、なかなか敷居が高いところがあります。
でも、だからといって遠慮していたら始まりません。そこは自分たちから行かなければいけない。
大事なのは、少しでも相手が関心を持つような情報や材料を持っていくことです。ただお願いに行くだけではなく、「こういう実績があります」「こういうことができます」というものを持っていく必要があります。
例えば、実際の工事で製品が使われたのであれば、その現場に関係する発注者へ顔を出す。国でなくても、県や市町村の仕事でもいいんです。
受注した施工会社との関係もありますから、施工会社と一緒に発注者へ挨拶に行く方法もあります。協会として顔を出し、まず知ってもらう。そこからがスタートです。
最初から国の機関へ行かなければならないと構える必要はありません。実際に使われている現場の発注者へご挨拶に行くところから始めればいいと思います。

「入り口」は、何年もかけて自分たちで見つける

鈴木副会長:
一つ一つ難しいこともありますが、我々協会も、忍耐強くお願いし、みんなで力を合わせて進めてきたから、今があります。
お願いする立場ですから、頭を下げることも必要です。根気強く取り組みながら、どうすれば相手に失礼がなく、こちらの考えを伝えられるのかを考え続けることが大切です。
最初から入り口が用意されているわけではありません。
いろいろなことを積み重ねて、何年もお願いに伺って、初めて「ここから入っていけばいいんだな」という入り口を自分たちで見つけるんです。
その入り口を見つけることが大切だと思います。

佐々木理事:
実績のある現場の発注者がいれば、まずそこへ顔を出し、顔を覚えてもらう。こちらも相手を知る。そこからです。
その方とのつながりから、別の方を紹介してもらえることもあります。ただ、1回や2回でできることではありません。
「また来たのか」と言われるくらい、何度も通ったこともありました。
私が発注機関にいた頃も、遠方からわざわざ来られた方については、できるだけお断りしないようにしていました。
どれだけ忙しくても、30分でも時間を取る。会えば、こちらも相手から情報を教えてもらえます。
そうしたやり方を続けてきたからこそ、役所を辞めた後も、人とのつながりが残っています。関係づくりには決まったマニュアルがあるわけではありません。
根気強く続けることが大切です。

協会を長く続けるために、設立時の理念を引き継ぐ

ーー橋塗協は1966年の発足以来、長い歴史を重ねてこられました。協会を継続し、発展させていくために大切なことは何でしょうか。

佐々木理事:
協会を長く続けるのは、簡単なことではありません。
私は途中から橋塗協に入り、理事を務めさせていただいています。役所にいた時から橋塗協のことは知っていましたし、機会があるたびに講演などもさせていただいていました。
団体は長く続く中で、慣れ合いになってしまうと厳しいと思います。
もともと協会を作った時には、原点があります。「なぜこの会を作ろうとしたのか」という設立時の理念です。
その原点を継続して伝えていかなければ、表面だけの会になってしまいます。
「この時期になったから総会を開く」「毎年行っているから今年も行う」というだけでは、本来の活動とはいえません。
設立時の理念をずっと引き継いでいくことによって、協会は長く続いていく。私はそう思っています。

鈴木副会長:
本当にその通りだと思います。
理念を大切にしながら、根気強く、忍耐強く取り組むことです。一つひとつの出会いや機会を無駄にせず、相手に失礼のない進め方を考えながら、関係を積み重ねていく必要があります。

協会間連携は、実績と対話の積み重ねから

ーー橋塗協とシステム吊り棚足場協会は専門分野こそ異なりますが、どちらも橋梁の維持管理を支える団体です。今後、どのような連携が考えられるでしょうか。

佐々木理事:
まずは、お付き合いを深めることだと思います。
連携していくためにも、実績を作らなければなりません。その実績の中から、お互いに現場の課題や必要な技術が見えてきます。
塗装会社と足場は、現場で必ずつながりがあります。
実際に使った方から、「こういうものがあった方がいい」「ここはこうした方がいい」という意見を聞き、その声を技術や製品に反映する。
そうした取り組みを続けることで、連携が深まっていくと思います。

熱意がなければ、新しい取り組みは続かない

鈴木副会長:
新しいことを「やろう」と決めて、実際に動かすのは非常に大変です。
人を集めなければなりませんし、関係する多くの方にお願いし、調整しなければなりません。
ただ流されて行うのではなく、本当に実現しようとするのであれば、やる気と熱意が必要です。
簡単にできることではありません。
だからこそ、根気強く、人との関係を大切にしながら取り組み続けることが必要なのだと思います。

事務局より

今回の取材で、鈴木副会長と佐々木理事から繰り返し語られたのは、「人とのつながり」「理念」「実績」「熱意」という言葉でした。
橋梁工事は、「造る時代」から「守る時代」へ移っています。
安全性、省力化、AI、ロボット化、システム化など、技術を取り巻く環境は大きく変化しています。
しかし、技術を現場に届け、より良い施工につなげるためには、発注者、施工者、専門工事業者、メーカー、協会が対話を重ね、信頼関係を築く必要があります。

長い歴史の中で培われた言葉は、2020年に発足したシステム吊り棚足場協会にとって、今後の活動を考える上で大切な指針となりました。
SSAは、システム吊り棚足場の安全性と品質を高めるだけでなく、実際の現場へ足を運び、発注者や施工者、塗装に携わる方々の声を伺いながら、求められる技術と作業環境を形にしてまいります。そして、橋塗協をはじめとする専門団体との情報交換と技術交流を重ね、橋梁・鋼構造物の長寿命化と、より安全で持続可能な維持管理の実現に貢献してまいります。

鈴木副会長、佐々木理事、この度は貴重なお話をありがとうございました。

当協会では、推奨製品の組み立て動画や現場インタビューなど吊り棚足場に関するコンテンツを多数掲載しております。是非ご覧ください。

 

(記事:システム吊り棚足場協会 事務局)

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